慶應義塾大学病院 輸血・細胞療法センター

Center for Transfusion Medicine & Cell Therapy, Keio University Hospital

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CAR-T細胞療法におけるリンパ球アフェレーシス〜当部門の取り組み〜

CAR-T細胞療法とは

CAR-T細胞療法は、患者さんご自身の血液中にあるT細胞という免疫細胞を用いた治療です。採取したT細胞に、がん細胞を見つけて攻撃できるような加工を体外で行い、CAR-T細胞として再び患者さんの体内へ戻します。
この治療の大きな特徴は、患者さんご自身の細胞が治療薬の原材料になる点です。そのため、CAR-T細胞療法は、薬を投与するだけの治療ではなく、細胞採取、細胞製造、製剤の受け入れ・保管、投与、投与後の管理まで、複数の工程がつながることで成り立つ治療です。
慶應義塾大学病院では、血液内科、小児科、輸血・細胞療法センターをはじめとする多くの部門が連携し、CAR-T細胞療法を必要とする患者さんに安全に治療を届けられるよう取り組んでいます。
当院では、本邦で保険診療として使用可能なCAR-T細胞製剤すべてに対応しています(表1。2026年5月時点)。なお、治療の適応や具体的な治療内容については、担当診療科へお問い合わせください。

表1. 本邦で保険収載されているCAR-T製剤(2026年5月時点)

一般名
(薬剤名)
対象疾患 標的抗原
チサゲン レクルユーセル
(キムリア)
再発又は難治性の大細胞型 B 細胞リンパ腫
再発又は難治性のB細胞性急性リンパ急性白血病
CD19
アキシカブタゲン シロルユーセル
(イエスカルタ)
再発又は難治性の大細胞型 B 細胞リンパ腫 CD19
リソカブタゲン マラルユーセル
(ブレヤンジ)
再発又は難治性の大細胞型 B 細胞リンパ腫
再発又は難治性の濾胞性リンパ腫
再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫*
再発又は難治性の辺縁帯リンパ腫*
CD19
イデカブタゲン ビクルユーセル
(アベクマ)
再発又は難治性の多発性骨髄腫 BCMA**

*2026年4月に、新たに追加適応を取得
**BCMA:B-cell maturation antigen, B細胞成熟抗原

アフェレーシスとは

CAR-T細胞療法は、患者さんご自身の細胞を採取することから始まります。この細胞採取をアフェレーシスと呼びます。
アフェレーシスでは、患者さんに留置したカテーテルから血液を少しずつ体外へ取り出し、専用の装置に通して必要な細胞成分を回収します。CAR-T細胞の製造に必要な細胞を含む成分を採取し、それ以外の血液成分は患者さんの体内へ戻します。
アフェレーシスには通常数時間を要します。その間、血液は体外の回路を通って循環するため、患者さんの状態を確認しながら、安全に処置を進めることが重要です。

患者さんごとに異なる細胞採取

CAR-T細胞療法を受ける患者さんは、病気の状態、これまでに受けてきた治療、血液検査の値、全身状態、血管の状態などが一人ひとり異なります。そのため、アフェレーシスは全員に同じ方法で行えばよいというものではありません。
輸血・細胞療法センターでは、処置前に患者さんの状態、血液検査、カテーテルの状態、採取に必要な条件などを確認します。処置中も、患者さんの体調、血液の流れ、装置の状態、採取の進み具合を確認しながら、必要に応じて装置条件や採取条件を調整します。
私たちは、アフェレーシスを単なる「細胞を採る手技」ではなく、CAR-T細胞療法を安全に次の工程へつなぐための重要な医療行為と考えています。

多職種連携で支える安全なアフェレーシス

当院では、アフェレーシスを輸血・細胞療法センターの専任医師、臨床工学技士、臨床検査技師、看護師などの専門職が連携して支えています。さらに、血液内科、小児科、薬剤部、細胞製造を担う企業など、さまざまな部門と連絡を取りながら治療を進めます。
医師は処置全体の安全性を確認し、処置中の判断を行います。臨床工学技士はアフェレーシス装置や体外循環回路が安定して作動するよう管理します。臨床検査技師は血液検査や採取された検体の評価を行い、細胞製造に必要な情報を関係部門と共有します。看護師は患者さんの体調や症状を確認し、安心して処置を受けられるよう支援します。
これらの専門職が密に連携し、アフェレーシス中の進行状況をリアルタイムに評価しながら、安全性と採取効率の両立を目指しています。

Our Multidisciplinary Approach to Leukapheresis for CAR-T therapy

採取後も続く輸血・細胞療法センターの役割

輸血・細胞療法センターの役割は、細胞を採取して終わりではありません。採取された細胞は、決められた手順に従って処理され、CAR-T細胞を製造する施設へ送られます。その後、製造が完了したCAR-T細胞製剤は病院へ戻ってきます。輸血・細胞療法センターでは、採取した細胞の取り扱い、製造企業との連携、製剤の受け入れ、保管、管理、投与に向けた準備などを担っています。これらは患者さんからは見えにくい部分ですが、CAR-T細胞療法を安全かつ確実に届けるための大切な基盤です。
我々、輸血・細胞療法センターは細胞採取だけでなく、採取した細胞の品質評価、製薬企業との連携、製剤の受け入れ・保管・管理、投与支援までを一貫して担い、治療が円滑に進行するよう、日々努めています。

よくあるご質問

  • アフェレーシスは痛いですか?

    アフェレーシスそのものに強い痛みを伴うことは通常ありません。ただし、カテーテルを留置する際や、長時間同じ姿勢で過ごすことによる不快感が生じることがあります。また、アフェレーシス中は血液が凝固しないようにするために、抗凝固薬を併用します。この薬剤の副作用で、手足などに軽い痺れが生じることがあります。当部門では、これを予防・軽減するための薬剤も併用しながらアフェレーシスを実施しております。アフェレーシス中は、スタッフが適宜体調を確認しながら対応します。

  • アフェレーシス中に気分が悪くなることはありますか?

    処置中に、しびれ、寒気、気分不快、血圧の変化、疲労感などがみられることがあります。当部門では、医療スタッフが必ず同伴しておりますので、お気付きの症状がある場合はすぐにお知らせください。

  • どのくらい時間がかかりますか?

    採取にかかる時間は、患者さんの状態、血液検査の値、血液の流れ、使用するCAR-T製剤の条件などによって異なります。一般的には数時間(3~6時間)かかります。

  • アフェレーシスを行う部屋はどうなっていますか?

    アフェレーシスは基本的に当部門にて実施します。患者さんには電動のリクライニングチェアにお座りいただきます。リリクライニングチェアにはテレビが備え付けられており、DVDなどをご覧いただくことも可能です。また、ご自身のスマートフォンも使用できます。
    細胞を適切に管理する環境を保つため、部屋が寒く感じられる場合があります。その際には、電気毛布やブランケットなどを使用して対応しますので、遠慮なくスタッフへお知らせください。

  • アフェレーシス中にトイレに行けますか?

    アフェレーシス中は、専用の装置と体外循環の回路につながった状態で処置を行いますので、原則として処置中にトイレへ行くことはできません。必要な場合には、医療スタッフの介助のもとで尿器などを使用して対応します。処置には数時間かかりますので、開始前にお手洗いを済ませていただくようお願いいたします。

  • どこから血液を採りますか?

    当院では、安全で安定した血液の流れを確保するため、主に足の付け根の静脈に一時的なカテーテルを留置してアフェレーシスを行います。カテーテルの種類等については、患者さんの状態を踏まえて医療チームが判断します。

  • 採取した細胞はどうなりますか?

    採取した細胞は、CAR-T細胞を製造するために専用の施設へ送られます。製造が完了したCAR-T細胞製剤は病院へ戻り、適切に管理されたうえで、患者さんへ投与されます。

最後に

CAR-T細胞療法は、患者さんご自身の細胞を用いる高度な細胞治療です。そのため、治療を安全に届けるためには、診療科だけでなく、輸血・細胞療法センター、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、薬剤師、製造企業など、多くの専門職の連携が必要です。
輸血・細胞療法センターは、患者さんが安心してCAR-T細胞療法を受けられるよう、細胞採取から製剤管理、投与支援までを多職種で支えてまいります。